「多変量解析と時系列解析のハザマ」に関する研究報告
狩野 裕(大阪大学人間科学部)
谷口正信(大阪大学基礎工学部)
1.研究目的
心理学・教育学・社会学などで扱われる反復測定データは,測定は数時点であるが独立標本が多くとれる.一方,工学・経済学などで扱われる時系列データは,独立標本はたくさん取れないが測定時点が多いという特徴がある.これらの分野の方法論はそれぞれ独立に発達してきた.本シンポジウムの主目的は,双方の分野の最新情報の交換の場を提供し,両分野のハザマの研究を促進することであった.
2.研究計画
本研究は平成10年度に下記の研究会を開催し,多変量解析と時系列解析を専門とする研究者が新しい研究成果を報告し議論を重ねることによって遂行された.特に,多変量時系列データの分析方法である三相データ分析の世界的権威であるKiers 教授(オランダ)を招いて,特別招待講演をお願いした.
研究集会:
多変量解析と時系列解析のハザマ研究分担者: 狩野 裕(大阪大学人間科学部)・谷口正信(大阪大学基礎工学部)
期日
: 平成10年12月17日(木)〜19日(土)参加人数
: 約50名場所: 大阪大学人間科学部東館2階 207講義室(ユメンヌホール)
3.研究成果
本研究集会で扱うデータは,経時データ・反復測定データ・縦断的データ・時系列データなどと呼ばれる.このようにいくつもの名称があるということは,似たようなデータ構造をもちながら,分析方法が育った分野が異なることを意味する.先に述べたようにここでの目的は,異なる分野間の情報交換であったが,同一概念でも言葉が違うということもしばしば観られ,十分な議論ができたとはいえなかった.しかしながら,このような試みが初めて行われたということを勘案すると,そのスタート台としての役割は十分果たしたといえよう.
本研究集会では上記目的に沿った17件の研究報告が行われた.講演3,10,14は,縦断的データを分析する多変量解析モデルである growth curve modelによる接近を議論した.講演4,5,11,12,15は項目×個体×測定時間の三相データの成分分析・分散分析によるアプローチが議論された.特に,特別招待講演[講演12 Kiers]では,一相三元データ(one-mode three- way data),二相三元データ(two-mode three- way data),三相三元データ(three-mode three- way data)を定義しそれぞれにおける成分分析方法が紹介された.時系列分析からの接近は,講演1,2,6,7,9,17によってなされた.講演13では医学データのプロフィールの凸 性のノンパラメトリックな分析が紹介された.講演16ではプロフィールのスムージング方法について報告された.
本研究集会の講演者および講演題目は以下のとおりである.
科学研究費「非正則推測理論と情報量の概念に関する研究」(基盤研究(A)(1) 研究代表者:赤平昌文)による研究集会を開催しますのでご案内申し上げます. 日時:平成10年12月17日(木)〜19日(土) 場所:大阪大学人間科学部東館2階 207講義室(ユメンヌホール) (大阪府吹田市山田丘1-2) 交通案内:(i) 地下鉄御堂筋線(北大阪急行)千里中央駅からモノレール15分 (万博記念公園駅での乗換え時間含まず)阪大病院前下車徒歩5分 (ii)地下鉄御堂筋線(北大阪急行)千里中央駅またはJR茨木駅から 阪大本部前行バス20分,阪大医学部前下車徒歩2分 参考地図 http://koko15.hus.osaka-u.ac.jp/~kano/map/index.html 研究分担者:狩野裕(大阪大学人間科学部)・谷口正信(大阪大学基礎工学部) お問い合わせ先:狩野裕(かのゆたか) email: kano@hus.osaka-u.ac.jp phone: 06-879-8052(直)
12月17日(木) | |
13:00〜13:10 | はじめに |
13:10〜13:55 | 川崎能典(統計数理研) 大規模マルチファクターモデルの推定について |
13:55〜14:40 | 加藤比呂子(NTT) 多変量時系列解析によるシステム解析について |
休憩 | |
15:00〜15:45 | 神田隆至(広島工業大)・大瀧慈(広島大・原医研)・藤越康祝(広島大・理)Simplified estimator and simultaneous confidence region in an extended growth curve model |
15:45〜16:30 | 市川雅教(東京外国語大)・小西貞則(九州大・数理学)因子分析における独自分散の最尤推定量の分布の漸近展開 |
休憩 | |
16:45〜17:30 | 千野直仁(愛知学院大)反復測定分散分析理論と,教育・心理の分野における適用の現状について |
12月18日(金) | |
9:10〜9:55 | 柿沢佳秀(北大・経済)多次元正規定常過程における標本自己共分散行列の漸近有効性について |
9:55〜10:40 | 松田 安昌(神奈川大・工) A model selection criterion for accurate forecasting of nonlinear time series |
休憩 | |
11:00〜11:45 | Tony Hayter (Georgia Institute of Technology) Some new results for statistical inference of simply ordered means |
11:45〜12:30 | 崔寅鳳・谷口正信(阪大・基礎工)Misspecified prediction in time series analysis |
お昼休み | |
13:40〜14:25 | 藤越康祝(広島大・理) 縮小ランク成長曲線モデルにおける次元の推定 |
14:25〜15:10 | 村上 隆(名大・教育)3相主成分分析による時系列データの解析 − 問題点と数値例 − |
休憩 | |
15:30〜16:15 | Henk A.L. Kiers (University of Groningen) An overview of three-way component analysis methods and some recent developments |
休憩 | |
16:35〜17:20 | 広津千尋(東大・工)・安達絵里(協和発酵) 経時測定データに基く処理比較−血圧および心拍数24時間値データへの応用− |
18:00〜20:00 | 懇親会(阪大病院14階スカイレストラン Phone: 06-879-5058) |
12月19日(土) | |
9:10〜9:55 | 横山隆久(熊本大・工) Non-null distributions of the Wald's criteria in random-effects growth curve models |
9:55〜10:40 | 江口真透 (統計数理研)主成分分析の新しい方法 |
休憩 | |
11:00〜11:45 | 柳本武美(統計数理研)・柳本正勝(食品総合研)平滑化母数の推定方程式とその適用 |
11:45〜12:30 | 近藤正男(鹿児島大・理)・藤井光昭(大学入試センター)時系列解析における離散データの解析について |
以上 |
研究集会名 | 「多変量解析と時系列解析のハザマ」 |
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研究代表者 | 赤平昌文(筑波大学) 基盤研究(A)(1) 課題番号 10304005 |
研究分担者 | 狩野 裕(阪大人間科学),谷口正信(阪大院基工) |
日 時 | 12月17日(木)〜12月19日(土) |
場 所 | 大阪大学人間科学部東館207講義室(ユメンヌホール) |
内容・目的 |
心理・教育・社会などで扱われる反復測定データは,測定は 数時点であるが独立標本が多くとれる.一方,工学・経済な どで扱われる時系列データは,独立標本はたくさん取れない が測定時点が多いという特徴がある.これらの分野の方法論 はそれぞれ独立に発達してきた.本シンポジウムの第一目的 は,双方の分野の最新情報の交換の場とすることである.し かし,より広く多変量解析または時系列解析に関する話題も 歓迎する. |
旅費の配分 | 講演者を中心に配分する |
宿舎の斡旋 | 斡旋しない |
講演申込締切 | 11月6日(金) |
申 込 先 | 狩野 裕(かのゆたか) 〒565-0871 吹田市山田丘 1-2 大阪大学人間科学部 E-mail: kano@hus.osaka-u.ac.jp Phone or Fax: 06-879-8502 (直) |
交通機関 |
・地下鉄御堂筋線(北大阪急行)千里中央駅からモノレール15分 阪大病院前下車徒歩5分 ・地下鉄御堂筋線(北大阪急行)千里中央駅またはJR茨木駅から 阪大本部前行バス20分,阪大医学部前下車徒歩2分 |