社会心理学・行動工学ジョイントセミナー

第9回行動工学特別セミナー

名古屋大学の唐沢かおり助教授をお招きして標記セミナーを開催します. ふるってご参加ください.
[唐沢氏からの質問到着]

日 時:11月5日(金)16:00〜18:00
場 所:大阪大学人間科学部21教室(本館2F)
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講演者と講演題目

唐沢かおり氏(名古屋大学情報文化学部社会システム情報学科 情報行動論講座)
  Is the personal always political? : A cross-cultural analysis of 
  abortion attitudes
狩野 裕  (大阪大学人間科学部 行動工学講座)
  尺度構成と共分散構造分析

唐沢かおり氏の講演要旨
問題を抱えた人たちへの非難や支援に関する態度は、政治・宗教・道徳などに対して個人が形成している「象徴的態度傾向(Symbolic predisposition)」と「問題の原因・責任帰属」の両者に規定されると考えられる。本研究は、両者の役割について、日本とアメリカでの中絶への態度を比較することで検討した。中絶は、アメリカでは道徳的・宗教的問題であると同時に、政治的問題であり、その賛否についての議論が公に行われるが、日本では、個人の道徳的問題として扱われがちである。したがって、象徴的態度傾向が原因帰属や支援への態度に与える影響を検討する上で、両国の比較は格好のフィールドを提供する。具体的には、日米両国の大学生に、「特定の原因(不注意、レイプなど)で望まないのに妊娠した」という事例を提示し、それらに対する統制可能性知覚、責任知覚、非難、支援意図、中絶への賛否と共に、政治的態度、宗教的態度、道徳的態度、性役割態度について評定させ、変数間の関係について検討した。その結果、1)中絶への賛否と支援意図は帰属変数と象徴的態度傾向とに影響される、2)日本人サンプルでは、象徴的態度傾向よりも、帰属変数が中絶への態度をより強く規定する、3)アメリカ人サンプルでは責任の知覚が象徴的態度傾向とより強く関連する、の3点が明らかとなった。したがって、社会問題が政治的(または宗教的)色彩を帯びたときには、その問題に対する態度を予測する要因として象徴的態度傾向の役割が増すと共に、原因や責任の知覚自体が象徴的態度傾向に影響される可能性が示された。

狩野 裕の講演要旨
尺度構成を行うための道具は因子分析である.ある構成概念に関連すると思われる質問項目への回答を因子分析し各因子に対応する下位項目を作成,そして,下位項目のα係数を計算して尺度の一元性を確認する.下位項目を合算して(下位)尺度とする.このプロセスに関して,(i) なぜ因子分析するのか,(ii) α係数の役割は何か,(iii) 合算することの意義はどこにあるか,以上の3点について共分散構造分析を用いて議論する.さらに,下位項目が多くないとき,つまり,合算する項目が少ないときの解析方法を提示する.以上を唐沢氏の講演にコメンテイトする形で紹介する.また,唐沢氏から, 今回の分析を実行するにあたり疑問に思ったこ とを挙げてもらう.その疑問について,狩野が方法論者からコメントする.

ご不明な点などがございましたら狩野(行動工学 06-6879-8052, kano@hus.osaka-u.ac.jp)または,三浦(社会心理学 06-6879-8040, asarin@hus.osaka-u.ac.jp) まで,お問い合わせ下さい.


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