非平衡・非線形・非適切−そして階層

鈴木 貴
  主な研究テーマ
[1]非線形現象の解析・モデリング
[2]非適切問題
[3]変分問題
[4]数理医学

[目的]
 基礎科学(物理学・化学・生物学)や応用科学(工学・医学)が扱う問題には数学的な類似性があり, 研究室では数理モデルを用いてこれらの問題を解決することを目的としている.
 
[方法]
 現実の問題を数式で記述することが数理モデル研究の出発点である. 研究室ではミクロな状態 から平均場を導出するボトムアップと逆にマクロな原理から方程式を記述するトップダウンの二つの方向のモデリングを実施している. 得られた方程式からは数値シミュレーションによって多くの興味深い現象が観察されるので背後にある数理を描出する. さらに解析的な研究によって「量子化する爆発機構」「循環的階層」「場と粒子の双対性」など単純な言葉で記述される深い原理に触れ, 研究領域を広げる. 研究は学部・院生・ポスドク生の教育とも一体化しており, 研究スタッフの育成によるプロジェクト研究の進展も担う.現在進行しているプロジェクトは基礎工学研究科や大阪大学を基盤とする「非線形テクノサイエンス」, 研究テーマによる「理論応用力学講演会」「変分問題の新展開」「数理医学」, また近隣の国外研究者とともに運営する「東アジア偏微分方程式会議」などである.研究室にはJST によるCREST 研究「数理医学が開く腫瘍形成原理解明と医療革新」, マリーキューリーアクションによるギリシャ・イタリアとの国際研究交流事業などにより, 何人かの留学生や特任研究員が滞在している.
 
[対象]
 理学的な研究対象は, 自己重力流体(星雲・恒星・プラズマ), 輸送現象(電子・化学物質・エネルギー), ミクロに誘起される極限状態(超伝導・超流動・凝縮・乱流), マクロな臨界状態(相転移・相分離・ヒステリシス), 腫瘍形成(抑制/亢進・正負のフィードバック・自己性・細胞サイクル・信号伝達・スイッチング・活性化/局在・分解酵素・走化性/走触性・生成/消滅)などである. ここでは変分・散逸構造や平均場理論を用いた数理モデリングや, 得られた非線形偏微分方程式の分析をおこなっている. これらの問題には質量・温度・エネルギーなどの保存量と断熱極 限・定常状態・空間的凝縮などの平均場レベルにしたがって, 非局所項を持つ放物型や楕円型の非線形偏微分方程式が現れる. この着想は細胞性粘菌が凝縮して胞子をつくる過程の研究において放物―楕円型の非線形方程式系において「コラプスの量子化」が成り立つことを証明し・Eスことから得られたものである[3]. スケーリングと双対変分原理を用いて統一的に解析する方法で, 定常解集合の構造や粒子の運動則から解の爆発/創発・遷移的秩序形成などのイベントが証明され た[1]. 現在, 非平衡熱力学・ゲージ理論・統計力学と関連して成果を挙げつつあり, 研究のフロンティアはこの枠組みに入らない, 腫瘍形成・化学反応速度などの散逸構造に向かっている. 最近は特にハミルトン構造に興味を持っている. 一方非線形性や非平衡性とは異なり, 工学的な研究対象においては「非適切性」が重要なテーマである.解の一意性のない世界でヒューリスティックに「望ましい解」を計算機に検索させる方法-「平行最適化」「ENIDM」や計算ホモロジーを 用いた「自動画像診断」は医療現場と連携して成果をあげている.
 
[基礎]
 数学解析・数値解析については[4,5] を著している.[2] は非線形偏微分方程式の入門書である. 前期課程では学生のバックグラウンドに応じて研究資料を集めるとともに数値解析または数学解析の標準的なテキストを用いて解析的な基礎力を鍛錬し, 適宜テーマを選んで研究を開始する.
 
[0]原理と現象-数理モデリング, 培風館, 2010, 出版予定(共著)
[1]Mean Field Theories and Dual Variation, Atlantis Press, Amsterdam-Paris, 2008.
[2]偏微分方程式講義:半線形楕円型方程式入門, 培風館, 東京, 2005 (共著).
[3]Free Energy and Self-Interacting Particles, Birkhauser, Boston, 2005.
[4]Applied Analysis : Mathematical Methods in Natural Science, Imperior College Press, London, 2004 (共著).
[5]Operator Theory and Numerical Methods, North-Holland, Amsterdam, 2001 (共著).