「あなたも共分散構造分析のエキスパートに」

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大阪大学人間科学部 狩野 裕

データを因子分析し因子を抽出する.各因子に係わる観測変数を合算する ことで尺度化する.尺度間の相関を求めたり,尺度化された変数を用いて 回帰分析する.社会科学における典型的な多変量解析の手順である.い や,手順であった.AMOS や EQS を始めとするユーザーフレンドリーな共 分散構造分析ソフトウェアの出現で,このルーチンは完全に共分散構造分 析(多重指標分析,または,潜在変数の回帰分析)に取って代られたと 言ってよいだろう.従来の方法で分析した論文に対しては,「共分散構造 分析で分析し直しなさい」という査読報告が,しばしば届くようになると 思われる.

共分散構造分析の基本モデルは,パス解析モデル・検証的因子分析モデ ル・多重指標モデルの3つである.共分散構造分析のビギナーの方々は, まず,これらのモデルを十分に理解して欲しい.

多母集団の同時分析や平均構造モデルは,やや高度である.しかし,習得 しがいのある分析方法である.実験データの共分散構造分析,潜在曲線モ デル,多水準データの分析など共分散構造分析の適用範囲はどんどん広 がっており,ソフトウェアも日進月歩である.

新しい分析方法をマスターするのは並大抵のことではない.我々のような 方法論者でも,新しい分析方法に慣れるのにそれなりの時間がかかるので ある.日本の大学で,共分散構造分析の講義を受けている人や受けた人 は,残念ながら皆無である.現在のところ,SPSS 社や学会主催の講習会が 唯一の情報源であろう.これらを活かして,あなたも,共分散構造分析の エキスパートになろうではないか.


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