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「21世紀は行動計量学の時代である」

To: Yutaka KANO 
Date: Thu, 27 May 1999 13:14:59 +0900

狩野裕様

 「21世紀は行動計量学の時代である」を拝読いたしました。
21世紀が生活の質(QOL)の向上に向けられることについては当然のこと
であると思います。20世紀末の今日、確かにその傾向はあると思います。
しかし、品質管理の観点からすればQOLは過去の用語であり、企業活動が
地球(世界)規模で展開される現在では、(現在ー未来を含めた地球規模で
の)人類の質(QOL)に対象が移っているというべきであり、自動車会社の無
公害エンジン開発、熱帯雨林保護を狙った建設業界の活動、地球環境を狙っ
た原子力発電を含めた電力開発と熱効率向上活動などに代表されると思いま
す。
 東北大学学長西澤氏の論を待つまでもなく、21世紀はQOLの向上を果
たすための技術開発こそが望まれていると考えます。
 「そのための技術は遅々として進まない」というのが私の印象であり、そ
の主原因の一つが計測技術の開発の遅れであるといえます。鉄鋼会社にして
も、生産技術の本質は過去に開発された加熱量と加熱時間を制御する方式か
ら脱却できず、しかもそうした制御方式では得られる製品品質との相関関係
が不十分であることは明白であるにも関わらず、計測技術は未開発のままで
あります。
 新しい技術の開発にとって計測技術開発が必要不可欠であるとは明白であ
り、過去に数理統計学が工業において注目された最大の要因の一つが未開発
な計測技術を補った形での現象の確率法則化(モデル化)であったと思いま
す。その意味でも、私は
   「21世紀はQOL向上に寄与する科学誕生の時代」
であって欲しいと思っています。
 また、新技術が開発されたとしても、その技術による直接のメリットとは
逆に副作用的なデメリットの評価が必要不可欠であること、技術そのものの
信頼性確保が必須であることなど、「真にQOL向上を果たす」ために解決
されなければならない技術課題は山積しているのではないでしょうか?

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猪原正守(大阪電気通信大学情報工学部情報工学科)
TEL (0720)20-9000
FAX (0720)20-9017
E-mail ihara@ihlab.osakac.ac.jp


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