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「統計学パラダイムの変換に向けて」

From: "Mayomi MAYANAGI" 
To: "Yutaka KANO" 
Date: Fri, 19 Nov 1999 22:01:44 +0900

女子栄養大学の真柳です。

先生の統計学のパラダイムを読んで、少し思ったことを書かせてください。

数理総計学の手法が応用の世界に降りてきて、一般的に活用されるようになるのに
10年はかかる。日本にいるなら、20年は見た方がよい、と、統計学って役に立つみ
たい?と思い始めた頃に教えられました。そして、実際自分が使っている手法を考
えても、理論は20年以上も前に考えられたものばかりです。

生化学や現代生物学の新知見は数年後には高校の教科書に載ります。DNAだって、
2重らせん構造だって、タンパク合成だって今や常識です。歴史や政治/経済を考え
ても、次々新しい内容が追加されていると言うのに、なぜに統計学は世の中に出て
から役に立つにもかかわらず(私はそう思ってます)、ちいとも役に立つという事
を「教えてもらえない」のでしょう?

高校の数学は簡単になるばかりなのでしょう?理論が先に進んでいくのに、常識の
レベルが後退していってる感すらあるのではないでしょうか。統計学って役に立つ
んだよ、ほーら面白いでしょう?と、なぜ宣伝する人が少ないのでしょう?
大学に入ってから(まして専攻を決める段階になってから)そんなこと聞いたって、
うそだああ?くらいにしか思えないんじゃないでしょうか。

前に六本木の飲み屋で狩野先生にまでお伺いしたように、私は数理統計学者さんた
ちが、今、一体、何を研究してるのか、まったくわかりません。理論内容はもちろ
んわからないのですが、一体なんの役に立つのか、何のためのものなのかが、想像
不可能なのです。これは私がおばかさんである、というのを差し引いても、大多数
の統計手法の応用を行っている実務家達の共通意見だと思います。手法にしても、
こんなことに使えるんじゃないか?という提案がないと、想像力の貧困な私などは、
とても数式の中からそれを見出すことは出来ない・・・・。なんでそういう宣伝を
してくれる人がいないんでしょうか?

工学屋さんなんか、自分が作った機械や設備や、工程、設計、理論・・・そういう
のを聞かなくたって自慢下に話して聞かせてくれますし、売り込みにきます。俺の
やってることは世の中の人にはわからない、このすばらしさは俺だけのもの、とで
も言うのでしょうか?統計学のすばらしさとは、応用可能性の広さに他ならないよ
うな気がするのですが・・・。

話はかわって・・・

実は某「○○研」でデータ解析コンクールをしました。講師も会員もみんなで参加
しました。データは共通で、だれもが理解可能なデータです。これを自分の好きな
ように料理するのです。ご存知のように「○○研」には、名だたる講師の先生方が
おりますが、結果、優勝者は実務家でした。・・・。

もちろん、先生方が具体的なデータの解析をいつもしてらっしゃるわけではない、
というのはわかります。時間が短かった、それも理由の一つでしょう。でも・・・。
なんだよ、口ばっかりじゃないか、思われても仕方ないのではないでしょうか。あ
んな手法もある、こんな手法もある、と言うなら、使って見てよ、と思わなくもな
いわけです。データを縦から横から斜めから眺め回して、いじくりまわして、どう
ぞ高度な手法でもなんでもお使いください、という状況だったのですから。結果的
にデータから有意な知見を得ると言う、まさに応用と言う場面では、こんなにも無
力な人たちなのか?と目を(正確には耳を)疑いました。(話によると、講師の中
では環境心理専門の講師が一番よい解析だった、ということです。)結果的に、理
論のそこそこわかる実務家のパワーだけが目立つ解析コンクールでした。

理論(研究)も応用(コンサルティング)もどっちもできるスーパー統計家の登場
を、待ち望んでいると言うと、やっぱり欲張りでしょうか。実務家が統計学者に求
めているもの、を考えると、もちろん理論の研究ではあるのです。ですが、具体的
に何に使えそうなのか、どう使えばいい手法なのかを、「教えてくれ〜」という事
もあるのだと思うのです。とにかく、その距離はあまりにも大きくて、話をしても
宇宙人と話しているようです。宇宙人とのバイリンガルが現れてくれることを、一
埼玉県民は切に望んでおりまする。





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