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「統計学パラダイムの変換に向けて」

豊田@早大です

狩野先生:

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統計学パラダイムの変換に向けて:
「有意な共同研究」のススメ 

因子分析はスピアマンやサーストンといった計量心理学者が心理学者
と「有意な共同研究」を行った結果,生まれた手法であることは事実
です.しかし英雄は例外なく色を好みますが,女好きが英雄になれる
確率は極めて低い.釈迦に説法ですが,因果には方向性があります.
「有意な共同研究」を手段に行動を起こしても,それを提起しても,
ブレイクスルーとなる切り口が開発される可能性は極めて低いと言わ
ざるを得ません.人気も同様です.因果の方向が逆です.
統計学の知識を持った人間が,何かの弾みで,ある実質科学的な現象
に心を奪われ,恍惚としているうちに,結果として有意な共同研究(
あるいは単独の研究)がなされ,ブレイクスルーとなる切り口が作ら
れるのではないでしょうか.もちろん恍惚としているうちに数理統
計学のキャリアアップは当然断念せざるを得ないだろうし,(応用に
堕したという)仲間からの侮蔑にも耐えなくてはならないはずです.
意義深い共同研究はけっして片手間にはできないのです.場合によっ
ては数理統計学者の看板降ろす覚悟さえいるほどです.そう簡単には
他人に「ススメ」られないはずです.
結局,一人一人が本当に面白い 3度の飯より好きという対象に対峙し
ていくより他にないのではないでしょうか.それが現実に何の訳にも
立たないように見える数理統計学のハイブロウな定理の証明でも,逆
に,応用に堕したと蔑まれる共同研究でも,どちらでも良いのではあ
りませんか.少なくとも他人志向を始めたら,その時にこそ,その分
野はすたれ始めるのです.
91年夏に研究室を訪ねたとき,狩野さんは「女性は追いかけてはいけ
ない.追いかけさせなくてはいけない」と助言してくれました(覚え
ていらっしゃいますか?).その通りだと思います.好かれようと思
ってケーキやコーヒーを用意して,懐を寂しくして追いかけても逆効
果です.こんな面白い分野の競争相手が増えたら困る(話しが聴きた
かったら時間を作るから逆にケーキを持参しなさい)くらいの気持ち
で,堂々と自分のやっていることに自信を持っている男(研究者,分
野)を追いかけるのではないでしょうか.また,それで追いかけてく
るような人だけに来てもらわないと困るでしょう.
大学でまともに数理統計の勉強しなかった私も統計学を必死に追いか
けている一人です.商学部にも経済学部にも教育学部にも文学部にも
狩野さんの回りにも私のような人間はたくさんいるはずです.統計学
は十分に追いかけられている学問です.
しかるに数学出身者の統計学という小さなセクトのためにどうしよう
とか,ポストのためにこうしようとかいわれると,逆に鼻白んで,ガ
ッカリしてしまいます.

無礼な物言いをし,失礼いたしました.

P.S.91年夏にいただいた上記の助言は,直喩だったのか隠喩だっ
たのか未だにわかりませんが分からないままで良いのかもしれません.


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TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor,         Department of Psychology
TEL +81-3-5286-3567               School of Lieterature, Waseda University
toyoda@mn.waseda.ac.jp    1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
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