第6回国際分類学会ローマ大会 (IFCS98-Roma)に出席して

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大阪大学人間科学部 狩野 裕

今夏7月21日から24日にかけてローマにて第6回国際分類学会大会 (IFCS, International Federation of Classification Society) が開催された.これは,各 国の分類学会が集まり2年に一度開催される合同大会である.当学会が 1985 年に設 立されたときは6カ国であったが,現在では11を数える.日本は設立当初からのメ ンバーであり,2年前の大会が神戸で開催されたのは記憶に新しい.

大会会場への地図が事前に配られていなかったことや4つあったセッション会場のう ち2つが十分な大きさでなかったというマイナーな問題があったものの,大会運営は パーフェクトであった.通信費を節約するため,プログラムなどは WWW で公開し郵 送されなかった.このような方法は国際会議のスタンダードになると思われる.

査読をパスした発表原稿は,Advances in Data Science and Classification という タイトルの本として Springer から出版されている.多くの場合,大会が終了してか ら Proceedings Book を出版するのであるが(IFCS のガイドラインにもそうあるら しい),今回は大会前に本が出来上がっていた.大会事務局が頑張った証左であろう .

大会は4日間で行われ,初日の夕方にレセプションパーティ,2日目に市内ツアー, 3日目にバンケットが行われた.小高い丘の頂上にある大邸宅(パンフレットには Relais le Jardin a Villa Miani とある.リッチなローマ人が結婚式を挙げたりパ ーティをするところらしい.)で行われたレセプションパーティは秀逸であった.美 味なる料理はもちろんのこと,会場からは古代ローマのすべてが一望できるという最 高のロケーションであった.その夕陽の美しかったこと.欧米人は話好きである.例 にもれず,このパーティも深夜10時まで盛り上った.

セッションは大きく分けて,招待講演,招待セッション,一般講演セッションの3つ があり,すべて合わせて講演件数は194であった.参加者は310名であった.9件の招 待講演は2〜3件ずつ午前の最初にスケジュールされており,日本からは,林知己夫 先生が招待講演をされた.

林知己夫先生は1998年1月より IFCS 学会長である.大会では会計を務めている林篤 裕氏(大学入試センター)が紹介された.1996年に行われた神戸大会は参加者216名 を数え成功裏に終わった.このように,日本人が学会を直接サポートすることは極め て重要なことであり,このような機会は今後ますます増えていくのではないかと思う .

私にとって興味のある話題はたくさんあった.特に,招待講演である Bozdogan氏 の Informational Complexity Criterion によるモデル選択,Montfort 氏のカテゴリカ ル変数の潜在変数分析など私の専門に近い講演も多くあり実りのある大会参加であっ た.一方,私が発表した因子分析のセッションでは興味深い講演はなかった.ニュー ラルネットやファジイによる分類法や判別分析への接近も議論されていたが,残念な がらそれらのセッションには参加できなかった.また,吉村・大隅氏ら(統計数理研 究所)によるインターネット調査に関する研究も興味を惹いた.

全体を通して,これは最近のどこの会議でも言えることであるが,議論は低調であっ た.緊迫した白熱した議論はあまり見かけなかった.数年前,イタリア北部の小さな 街で行われた潜在変数モデルに関する国際シンポジウムに参加した.そこでのやり取 りは今でも記憶に鮮明である.最尤法信者の Joreskog 氏と最小2乗法信者の Schneeweiss 氏との議論は大いに熱がこもっていた.同じ会議でラウンドテーブルデ ィスカションがあり,潜在変数モデルの問題点や将来像について専門家が議論し合っ たが,それは迫力があった(期待していた議事録は出版されなかった).やはり,企 画力であろうか,時代の(悪い方向への)流れであろうか.会場や excursion はど んどん充実していくのに会議自体の魅力は薄れてきているのではないだろうか.

ローマのように街全体が博物館と言える都市で国際会議を開催することができるのは 何とすばらしいことか.また,私はこの程度の規模の会議(講演数 150〜200; 出席 者数 200〜300)が好きである.この規模ならば,4日間の会議の間に同じ人と何回 も出会う.その度に冗談を交わす.そしてアカデミックな話に入っていくこともある .その結果,大学へ招いてくださったり,こちらが招聘したり,狭い意味での大会参 加で得ること以外に将来へつながる可能性が出てくる.次の大会は 2000 年にベルギ ーの Namur で開催される.

IFCS 学会事務局 URL http://edfu.lis.uiuc.edu/~class/ifcs/
IFCS2000-Namur 大会事務局 URL http://www.fundp.ac.be/~ifcs2000/


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