(探索的)因子モデルにおける特殊分散 $\psi_1$ の新しい推定量として \begin{equation} \wht\psi_1=s_{11}-s_{12}S_{32}^{-1}s_{31} \end{equation} を提案した.ここで,$s_{ij}$ は標本分散行列を適当に分割したものである. $\psi_i$ $(i=2,\cdots,p)$ に対する推定量は,観測変量を適当に入れ換えた後,同 様にして得られる.$\wht\Lambda$ は $\wht\Psi$ が与えられると,$S-\wht\Psi$ に基づいて固有値問題を解くことにより得られる.心理学などでより重要な共通性 (communality) は,$s_{12}S_{32}^{-1}s_{31}$ で推定できる. この推定法は次の好ましい性質をもつ: \begin{enumerate} \item 最尤推定法 (MLE) や一般化最小2乗法は推定値を得るのに反復法を必要とする が,(1) は非反復推定法である.一致性,漸近正規性があり,尺度等変である [6]. \item MLE と比べて不適解(i.e., $\wht\psi_i\le 0$ for some $i$)が出にくい. 中小標本のときは,2乗誤差の意味で MLE よりも良い [9]. \item 因子数 $k$ を過大推定しても一致性が保たれる.この性質が,新しい推定法に おいては不適解があまり発生しないことに対する根拠になっている.また,この結果 は,モデルの識別可能性が一致推定量の存在のための必要条件である,という世間の 常識に対する反例にもなっている [11]. \item 因子数を過大推定したとき,(1) の推定量は標本分散行列の連続関数にならな いので,その漸近分布は簡単には求まらない.[14] はその漸近分布を求めることに成 功した. \item (1) は次の等式の標本版である: $$ \psi_1=\sigma_{11}-\sigma_{12}\Sigma_{32}^{-1}\sigma_{31} $$ この表現において,逆行列 $\Sigma_{32}^{-1}$ は一般逆行列 $\Sigma_{32}^-$ で置 き換えてもよいことを示した [8]. \end{enumerate}
★ 因子分析 v.s. 主成分分析([10])
[10] では,因子分析と主成分分析との類似点と相違点について議論した.さらに,観 測変量数が大きくなると,主成分ベクトルは因子負荷ベクトルへ収束することを解析 的に示した.
★ モデルに合わない変量を同定する([22])
(探索的)因子分析モデルにおける不適解発生の1つの原因として,モデルに合ってい ない観測変量が含まれていることが考えられる.[22] では,不適解が発生したとき モデルに合わない変数を同定するための手法を尤度比に基づいて構成し,いくつかの 実デ−タによりその有効性を実証した.
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