発達心理学会・日本行動計量学会ジョイントセッション

「成長・発達データにおける多変量解析の効用と限界」

日本行動計量学会第28回大会 特別セッション
於:東京大学駒場キャンパス 
日程:2000年10月7日(土), 8日(日), 9日(月・祝日)

[抄録原稿・発表要旨の書き方やより詳しい情報]
[抄録原稿・発表要旨の例(古いです)]

 オーガナイザー
   無藤 隆(お茶の水女子大学:発達心理学会)
   狩野 裕(大阪大学:日本行動計量学会)

        プログラム
 1. 中学生の学校への意欲の縦断的検討
            無藤 隆(お茶の水女子大学)
 2. 縦断データにおける誤差について
            氏家達夫(福島大学)
 3. 発達研究で統計的方法のバイオレンスはどこまで許されるのか
            松田浩平(文京女子大学)
 4. 多変量縦断データによる発達的変化の分析
            村上 隆(名古屋大学)
 5. 熟達の過程:潜在成長モデルによる野球データの解析  
            清水和秋(関西大学)
 6. Explaining SEM as mixed effect model in growth curve analyses
            Eisuke Segawa (University of Illinois at Chicago)
 7. 対応のある共分散行列の同時分析:震災ストレスデータの経時分析
            狩野 裕・豊本満喜子(大阪大学)
            服部祥子(大阪薫英女子短期大学)
            山田冨美雄(大阪府立看護大学)
            島井哲志(神戸女学院大学)
発表要旨
  1. 中学生の学校への意欲の縦断的検討
    発達的縦断研究での方法論の問題を考えるために,一つの縦断的研究事例を提供したい. 本研究では,中学生の自己概念,適応感,総合学習への取り組みが,どのように変化す るのかを縦断的データを用いて検討する.平均値の変化から,スポーツ自己概念は 中学生では安定しているが,それ以外の自己概念や適応感につながると思われる 充実感や学校生活への満足感は,1学期から3学期にかけて低下する傾向がみられる. 知的な広がりにつながると思われる学習観と興味の広がりでは,その様相が異なり, 学習観は時期を追って低下するのに対し,興味の広がりは学校,学年によっては増加する 可能性も示され,中学生の経験や中学生自身(学年)の特性によって様々である. 学校での活動として総合学習を取り上げたが,これはその実施方法が学校によって様々で あるように,学校により,また,学年特性によってポジティブにもネガティブにもなりうる. 今後,さらに一つの学校について翌年度の調査を継続する.10月には第3回目の調査結果を加え, 平均の差,相関,さらには重回帰や共分散構造分析等を組み合わせて解釈していきたい.
  2. 縦断データにおける誤差について
     子ども同士のやりとりを縦断的に観察したデータを用いて、縦断データにおける誤 差の問題を論じた。  ある現象を縦断的に追跡しても、必ずしも発達的変化を捉えられないことがある。 発達的変化が捉えられたとか捉えられなかったという評価は、客観的に決まるわけで はない。変化曲線が発達を示しているのかどうかを判断するときに、発達についてそ の人がもっているイメージを用いることが多い。そこで、オーソドックスな発達のイ メージを吟味した上で、実際のデータでそれらがどの程度見られるかを検討した。
  3. 発達研究で統計的方法のバイオレンスはどこまで許されるのか
    発達研究に限らず、心理的な測定場面では、データの形式に制約を受けることが 多くなってしまう。ところが、現実には因子分析に適さないようなデータであっ ても因子分析を研究の分脈上で用いることもある。このばあい以外にも出現した 行動の頻度を分散分析することもある。このような研究の事例を示して、本来は 連続量であるべき数値が、1−0データでしか得られないようなケースを無理に 多変量解析的な手法をもちいて解釈を行うのがどこまでの範囲でなら許されるの かという疑問を提示する。これをもとに討論を試みたい。
  4. 多変量縦断データによる発達的変化の分析
    質問紙を用いた,比較的長期にわたる縦断的データの分析方法について考察した。 こうした研究においては,項目に対する反応の背景にある複数の構成概念について, 機会間の平均値の変動,構成概念間の相関構造の変化,同一の構成概念上での個体の 相対的位置の安定性等についての結果が要求される。この場合,潜在変量を用いた 構造方程式モデルが分析方法の有力な候補となるが,ここでは,その問題点について 批判的に検討し,より単純な,全機会にわたって共通の重みを用いた合成変量を用いた 分析手続きを提案した。
  5. 熟達の過程:潜在成長モデルによる野球データの解析
    1つの変数の複数機会にわたる縦断的データの解析手法として、潜在成長モデル を、線形と非線形の2つに関して紹介した。プロ野球選手の10年間にわたる打率 の変化に、線形と2次関数の非線形モデルとを適用し、打率のピークが7年目に あるという結果を適合度の高い2次関数モデルから得た。プロ野球に入団後の1 年目を2軍で過ごした選手のデータを欠損データとして含めた分析からもほぼ同 様の結果を得た。非線形も含めて、変化の軌跡を構成する元型としての因子を特 定することが可能となったことの意義に言及した。
  6. Explaining SEM as mixed effect model in growth curve analyses
    I present a view that both SEM and MIXED are models which can model variance comonents explicitly. In some cases parameterization in SEM and MIXED is one to one and in that case you can obtain exact solution of SEM using MIXED (opposite is true as well). That includes some regression among latent variables (B parameter is not equal 0 case) models and Lambda is parameter but not constant case. However, when the parameterizatiion is not one to one you have to tweak MIXED effect program to obtain SEM solution. I did regressioin among latent variables analysis and confirmatory factor analysis using an existing MIXED effect program (Splus function). Given that the two models are very closely related, the restriction of the balanced design (not in the sense of missing data but in the sense that you can not use different Lambda over subjects as in MIXED) in SEM is too strong and can be relaxed. That is, individual should be allowed when models in SEM have one to one parameterization with MIXED.
  7. 対応のある共分散行列の同時分析:震災ストレスデータの経時分析
    多母集団の同時分析によって複数個の母集団における共分散行列の比較を行うことは共分散構造分析(SEM) のスタンダードである.ここでは,対応のある場合,すなわち,同一被験者に異なった時間において取られた 経時データの共分散行列の変化を検討する統計的方法論を提供する.扱うデータは,阪神淡路大震災による ストレスデータで,小学生・中学生を対象に3年にわたって取られたものである.