日本行動計量学会「春の合宿セミナー」報告
(学会会報記事)

運営委員長:岡太彬訓(立教大学社会学部)
企画責任者:狩野裕(大阪大学人間科学部)

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平成11年3月29日〜31日の3日間,大阪大学人間科学部にて春の合宿セミナーが開催 されました.本セミナーは,昨年度東京大学で始められ今回で二回目となり,心理 学・社会学・教育学など主に社会科学を専攻する大学生・大学院生・研究者,そし てより広く統計ユーザーの方々に,少しでも計量的方法を理解していただこうとい う目的で計画されています.講師の先生方のボランティア精神に支えられ,安い参 加費,集中的に,楽しく,他分野の研究者,例えば方法論者と応用の研究者との交 流,などが本セミナーの特色です.そして,これらを円滑に図るため合宿形式を とっています.特に,学部生・大学院生の参加を奨励するため,今回は宿泊補助を いたしました.結果として,209名(学生107名,社会人102名)の参加を得まし た.
具体的なプログラムや参加者アンケート集計結果などは以下のURLへお越しくださ い.

http://koko15.hus.osaka-u.ac.jp/~kano/seminar/gasshuku/index1.html

 今回この企画を担当して,このようなセミナーの需要は高いと感じました.た だ,関心を持っている人の専門分野が多岐にわたるため,情報を如何に流すか,参 加者のニーズを如何に探るかが難しいと思います.今回は,Webによる宣伝といく つかのメイリングリストへの投稿によって情報を発信しました.できるだけ多くの メイリングリストを利用することが効果的だと思います.
参加者の方々を代表して3名の方々に感想を書いてもらいました.


東北大学大学院文学研究科(行動科学研究室)M2 丸山勇治

 大阪大学人間科学部において行われた第2回春のセミナーでは、各種統計手法や 研究に役立つツールについての講義を受講することができただけではなく、懇親会 等ではなかなかお会いすることのできない方々と親睦を深めることができ、私に とっては非常に有意義なセミナーとなりました。 資料集によれば「『ユーザー』 の需要に的確に応え、かゆいところに手が届く勉強会を目指しました」ということ でしたが、統計分析に関する私の知識不足のせいもあって、統計手法の講義は講義 によって難易度にばらつきがあり戸惑うこともありました。講義対象者のレベルを あらかじめ提示していただければと良かったのではないかと存じます。 今回のセ ミナーの中で私にとって「かゆいところに手が届く」講義は、大阪大学の吉田先生 による「JavaScriptによる統計解析」の講義でした。大学の社会統計学などの講義 では、統計分析の手法を理解するために自分で電卓をたたいて計算していました。 しかし、計算が複雑になり電卓では手におえないような統計手法になると、統計ソ フトで計算するせいか今ひとつ理解できず使いこなせていないということがありま す。このため電卓に代わるツールを探していましたが、吉田先生の講義を拝聴する ことができたおかげで、JavaScript を使えば電卓代わりに少し複雑な計算ができ ることがわかったのは大きな収穫でした。私のようないわゆる文系の院生にとっ て、行動計量学会の合宿セミナーは統計手法の理解を深めるまたとない機会ですか ら、今後もセミナーが続けられることを切に希望いたします。最後になりました が、今回のセミナー開催のために尽力されましたスタッフの皆様に御礼申し上げま す。ありがとうございました。


女子栄養大学(食品学第一研究室)助手 真柳麻誉美

昨年に引き続き、今年も春の合宿セミナーに参加させていただきました。参加者も 昨年の約2倍ということで、活気に満ちた3日間であったように思います。企画・ 運営についても、昨年にも増して、より計画的・組織的に動いているといった印象 を受けました。 私は食品関連の学会にいくつか席を置いていますが、このような 「若手を育てる」という明確なコンセプトのもとに、暖かくて良心的なセミナーを 開いている学会を他に知りません。参加者の顔ぶれを見ても、非常に多彩な上、私 のように目の色も髪の色も違う分野の人間にも皆さん好意的に接して下さいまし た。今回の合宿で行動計量学会の懐の広さを実感し、学会入会を決意した次第で す。
 講義の方は、コースによっては消化不良ぎみのものもあったというのが正直 な所です。できましたら、難易度とともに、想定する対象者(学生か教育者か、実 務家か研究者か)等が事前に明確になっていると、講義選択の目安となり(消化不 良を避けるためにも)より良いのではないかと感じました。 講義の全体的な感想 としては、「メーカー」から「ユーザー」にという趣旨があった分だけ、逆に 「メーカー」と「ユーザー」の乖離が日の下にさらされたように感じました。もし ささやかな提案ができるとすれば、言葉も興味も理解も違う「メーカー」と「ユー ザー」をつなぐ、通訳のできる「ヘビーユーザー」による講義も設けていただけれ ば、さらに充実したセミナーになるように思います。
 来年もまた合宿セミナーが開催される事を願いつつ、企画運営にたずさわった 皆様への感謝の言葉で締めくくりたいと思います。 楽しい3日間をありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。


日本福祉大学情報社会科学部助教授 唐沢かおり

統計のエンドユーザーにもかかわらず、学生に統計を教える立場に立たされている 身にとっては、「これであなたも統計の鉄人になれる」というキャッチコピーは、 「塗るだけでスリムになる」と同じくらい魅力的…というわけで、大きな期待を抱 いて参加した。丁寧な解説、充実したプレゼンテーションと、講師の先生方の話し はどれも「あきさせない」内容であった。エンドユーザーにはちょっと厳しいレベ ルの話しもあったが、それでも、講義終了後の久々に頭を使ったという満足感(自 己満足?)は心地よかった。しかし、「手軽に分析できればそれが一番」というふ らちな私(そういう参加者の方は少数派だったのでしょうか?)にとっては、セミ ナーの成果といえば、とりあえず「すぐに役に立ちそう」な若干の断片的知識…と いうことになってしまうのだろうか?それではわざわざ大阪まで2泊3日もかけて お出かけした意味がない。「統計は本当は裏にもっといろいろ複雑なことがあって きちんと使おうとすると大変である。しかし、繰り返し使っているうちに何とかな るかもしれない」という勝手な思いこみを得て、「鉄人への道」は遠いがそれなり のエンドユーザーになることは可能であると悟ったことに意味を見出そう(と自分 を納得させる)。セミナー終了後の今、統計手法についてちゃんと勉強しないと… という気持ちが半分、いろいろ全部わかろうとするのは大変だから、とりあえず使 えるものは強引に使っちゃえ…という気持ちが半分。ちなみに、懇親会は、久しぶ りに大阪のこてーとしたのりを楽しませていただきました。お友達も100人とは言 いませんが数人できました。主催者の皆様、及び講師の先生方、ありがとうござい ました。


以上


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