理工系,生命系,経済・社会系等,多くの学問分野で実証研究が行われている.修士論文や博士論文においても適切なデータ解析が求められる.データ採取の方法や実験・調査のデザインは個々の学問分野や研究対象に依拠することも多いが,データ解析の方法とそのための基本的な考え方には普遍性がある.
本講義では,実質科学においてデータ解析を研究の道具として実際に使う学生を対象に,具体的な分析の手順・方法とそれらの数理的基礎,そしてそれらを適用する際の注意事項等を講述する.統計学から見たデータの採取方法を理解すること,及び,分析技法の正しい理解の下でデータを適切に解析できることを目的とする.
科目名称 | データ科学特論 II |
---|---|
単位数 | 2 |
担当教員 | 内田雅之,狩野 裕(世話教員) |
開講学期 | 夏学期集中 (2018年8月23日(木)~8月29日(水),土日休み) |
会場 | 大阪大学 基礎工学研究科 B棟 3F B300 (豊中キャンパス,基礎工B棟 3F B300へのアクセスマップ) |
受講要件 | 学部1年次レベルの統計学を履修または自習した者 |
単位認定 | 出席とクラス内活動,レポート課題により総合評価 |
日程 | 担当教員 | 講義題目 |
---|---|---|
講義内容 | ||
8/23(木) 3限~5限 |
古澄英男(関西学院大学 教授) | ベイズ統計学とマルコフ連鎖モンテカルロ法(3コマ) |
シミュレーションを利用した数値計算手法は,これまで扱うことができなかった統計モデルの解析を可能とし,統計科学のさまざまな分野で利用されるようになってきた.本講義では,基本的な乱数の発生法から説明を始め,モンテカルロ積分,さらにベイズ統計学においてよく利用されているマルコフ連鎖モンテカルロ法について解説を行う.また,いくつかの代表的なベイズモデルを取り上げ,マルコフ連鎖モンテカルロ法の応用例を紹介するとともに,利用する際の注意点などについても説明する. |
||
8/24(金) 2限~4限 |
鎌谷研吾(大阪大学 専任講師) | マルコフ連鎖モンテカルロ法とその収束(3コマ) |
ベイズ統計学における基本的な計算手法である,マルコフ連鎖モンテカルロ法の収束の仕組を学ぶ.まず二値のマルコフ連鎖や,離散の状態空間を持つランダムウォークの振る舞いから,収束のためのヒントを得る.それらを一般化することによって,既約性,周期性やエルゴード性といった基本的な内容を学ぶ.後半では一般の状態空間を考える.離散の状態空間の議論がそのまま適用できるところと,そうでないところを確認し,収束理論の直感をつかむ.最後に実際の数値計算の際に有用な,マルコフ連鎖モンテカルロ法の収束の指標を幾つか紹介する. |
||
8/27(月) 2限~4限 |
岡田謙介(東京大学 准教授) | 心理学におけるベイズ統計の展開(3コマ) |
心理学分野における近年のベイズ統計的アプローチの受容および展開には,大別して少なくとも2経路の来歴があると考えられる.ひとつは認知モデリングに代表されるような,数理心理学的な理論・モデルを実際のデータに適用するための方法論としての経緯である.もうひとつは,研究成果の評価が統計的仮説検定に過度な依存していることの弊害が明らかになる中で,求められた異なる体系としての経緯である.本講義ではこうした2つの研究の推移を追いつつ,心理学における最近のベイズ統計にまつわる研究や議論を解説する. |
||
8/28(火) 2限~4限 |
中村和幸(明治大学 教授) | 時系列・時空間データ分析におけるベイズモデルと数値計算(3コマ) |
時間発展する諸現象に対するベイズ統計モデリングと計算機解析の考え方について,各分野との共同研究を例として挙げながら解説する.まず,共同研究においてどのような観点と理由で統計科学の方法を用いる必要があったか,最適化等の類似手法との違いに注目しながら考え方を整理する.次に,共通する枠組としてのベイズモデル,時間変動を伴う現象に用いられる状態空間モデルとその延長としてのデータ同化について解説する.最後に具体例として,地盤工学や地球科学分野等での共同研究における問題解決のためのアプローチについて説明する. |
||
8/29(水) 2限~4限 |
吉田 亮(統計数理研究所 教授) | 機械学習の最前線:物質科学における応用事例を中心に(3コマ) |
本講義では,物質科学の世界のデータ科学(マテリアルズインフォマティクス)を題材に,表現・認識・予測・生成を対象とする機械学習の方法論を解説する.一般に物質の探索空間は極めて高次元である.例えば,有機化合物のケミカルスペースには,10^60個以上の候補物質が存在すると言われている.ベイズ推論,表現学習,転移学習,深層学習,実験計画法等を駆使し,このような広大なマテリアルスペースから所望の物性・機能を有する埋蔵物質を発掘する.物質科学における応用例を切り口に,データ科学がもたらすサイエンスの新しい在り方や可能性を示す. |
事情により講義内容等を変更する可能性があります. なお,各講義時間は下記の通りです.
2限 10:30-12:00 | |
3限 13:00-14:30 | |
4限 14:40-16:10 | |
5限 16:20-17:50 |