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高校生の皆さんは、「大学で何を勉強しようか」「大学ではどんな勉強をするのか」といった興味を持ってこのページに辿り着いたのではないかと思います。 ここでは私たちが何をやっているのか、「現象に対する数理的アプローチとは何か」を中心に、お話しようと思います。

現在私たちが学ぶ「数学」「理科」は、17 世紀に西欧において始まった分野です (まとめて「近代西欧科学」と呼びます)。 それまでにも、そして世界のあらゆる文化圏に「自然を扱う学問」はありましたが、ここで用いられる言語は日本語や英語、フランス語、ドイツ語といった (本当はラテン語) 日常で用いられる言語、「日常言語」でした。 一方 17 世紀の西欧において「自然を語るのに日常言語ではなく数学を言語として使ってはどうか」という思想が生まれました (ガリレイ、ここにはキリスト教の思想が背景にあります)。 これは自然現象を扱うのに、「数理的アプローチ」と呼ばれる、以下のような特別な方法を取るものです:
①数学を使用言語として現象の模型 (「数理モデル」といいます) を作り、 ②現代数学の力を用いて模型の性質を調べ、 ③実験・観察を通じ、得られた結果と現実との対比検証を行う。
この、「使用言語を日常言語から数学に切り替える」ことにより、たった 400 年程度の短時間の間に人類は電気を使い、ロケットで月まで行き、インターネットで世界中の事象を瞬時に知れるようになりました。 例えば「ロケットを飛ばす」ことに対する数理的アプローチは:①まず「ロケットの運動の数理モデル」を作ります。 「物理学」の 1 分野である力学によると、このモデルはニュートンの第二法則により与えられ、これは数学的に見ると「微分方程式」です (文科省指導要領下にある高校課程「物理」では運動方程式の微分方程式としての姿はほとんど見ることはできないかも知れませんが・・・)。 ②モデルは「微分方程式」なので、(現代) 数学の 1 分野である「微分方程式論」を用いて、この微分方程式の性質を調べます。 ③得られた知見をロケットの運動に応用し、ロケットの制御や改良につなげます。

こうして、理論物理学と数学と実験物理学 (もしくは工学) が一体となって、ロケットの運動という問題に当たるわけです。

上の例では扱う対象がロケットの運動でしたので、いわば「数学×物理学」が用 いられました。 同様に「数学×化学」「数学×経済学」・・・といった形で、様々な現象に対する「数理的アプローチ」が試みられ、大きな成果を挙げています。

日本では、高校までは「数学」「物理」「化学」など、文科省指導要領によって定められた各教科の内容は勉強するものの、お互いの関連について学ぶことはほとんどないかもしれません。 しかし現実社会においては上で述べた通り、(高校までは) 一見ばらばらに見える各教科が協働して解決すべき諸問題に当たることになります。

本講座ではこうした「数学×」の観点から、様々な現象の数理モデルについての研究・教育を行っています。 こうした研究を通じて、例えば、一見全く異なるように見える別の現象が、「数理 (数学) の眼」を通して見ると本質は実は同じであることを発見できたりします。 「分野横断的」な知見を得られる点が、高校までの「勉強」と大きく異なる、大学以上の勉学の特徴と言えるでしょう。

どういう生徒にオススメですか?

第一には、数学が好きな生徒です。また、物理学や生物学など様々な分野の中で数学がどのように使われているかについて将来勉強したいと思っている人にはオススメです。

数理科学コースに行きたいのですが、数学が得意でないといけませんか?

高校数学が得意でなくても、数学が好き、もっというと考えることが好きであれば、問題ありません。
経済や自然現象に興味を持っていれば良いと思います。

数理モデル講座で学ぶためには大学に入ってからどんな勉強をすれば 良いですか?

数理科学コースで学ぶ科目をしっかり勉強しましょう。特に3年生でゼミに配属されると、テキスト輪講を行います。その中で「極限」の扱いが重要になるので、大学における微分積分学をしっかりと学ぶと良いでしょう。また、関数解析学やフーリエ変換の知識があると、より良いです。