Research

数学を自然学に導入した西欧近代科学の創始から約 400 年、自然、社会、工学、環境、生命等様々な現実の現象に対し、
①数学を使用言語として現象の数理モデルを構成し、 ②現代数学の力を用いてモデルの性質を調べ、 ③得られた結果と現実との対比検証を行う、 という数理科学的アプローチはますます重要なものとなっています。 近年では計算機の発達もあり、自然現象だけでなく、ニューラルネットなどの「情報現象」、あるいは株価の予測など「経済現象」に対しても数理科学的アプローチによる研究が盛んになされ、その姿は現在も急速に変貌を遂げつつあります。

数理モデル講座では流体の運動に対する基礎方程式、量子現象に対する基礎方程式、物質内の熱拡散を表す基礎方程式、及び関連する関数解析・実解析の純理論的研究といった純粋数学的研究とともに、シャボン膜(界面流・表面流)上の石鹸の流れ、大気や海の流れ、癌治療にかかる電気穿孔法、ニューラルネットといった幅広い現象に対する数理モデルの研究を行っています。

数理モデル講座は「微分方程式グループ」と「応用解析グループ」からなります。

自然現象や社会現象の多くは非線型現象であり、そのモデルの多くは非線型方程式であって「手で解く」ことはできないため、モデルの数学的性質を調べるには現代数学的手法が必要となります。 両グループともに、様々な現象の数理モデル構築とともに、モデル解析の基礎を与える、純粋数学としての関数解析、実解析学、変分解析などの理論的研究も行っています。

微分方程式グループではシャボン膜(界面流・表面流)上の石鹸の流れ、大気や海の流れや、流体の一般的な運動、光ファイバー中の光の伝播などに対し、非線形現象の数理モデリングと、モデルとして得られた非線型偏微分方程式に対する理論的観点からの解析を行っています。

応用解析グループでは、現象に対する数理科学的アプローチの数理的側面について幅広い視点から研究を行っています。 対象とする主な現象は非線型熱現象、流体の一般的運動、量子力学的現象、フラクタル上の非線型拡散、癌治療における電気穿孔法、ニューラルネットなど多岐にわたります。

流体と気体の数学解析

流体力学の数理解析の大きな流れは、気体力学の記述に端を発する圧縮性流体の数理解析と、非圧縮性粘性流体( Navier-Stokes 流)の研究に大きく2分され、それぞれの分野で国内の研究グループは過去30年に渡って世界を大きくリードしてきました。

これらのモデル方程式から、拡散現象、波動現象を数理解析によって明らかにする研究をしています。

 
非線型波動の解析

水路に現れる波や光ファイバー内の信号伝達などに現れる特殊な非線型の波動現象を扱っています。

これらの波は、周波数によって進行速度が変化したり、非線形相互作用を持っていて、これらの効果でいろいろな現象が起こります。

このような現象に現れる方程式たちに対して、解の時間大域ダイナミクスの分類や時間大域挙動に関して特に興味をもって研究をしています。

 
自然現象の数理モデリング

大気や海洋などの大規模な流体のことを地球流体と呼び、その流れを支配する地球流体方程式に関する研究を行っています。近年、大気を漂うシャボン玉の数理モデリング等を行っています。

流体力学における領域摂動問題

領域形状の変形に伴って流体の運動がどのような変化をするのかを数理解析的手 法によって考察しています。
これらの研究は、例えば、人工血管の最適形状を定めるといったような、領域形 状のデザインに関連する問題といえます。
最近は、流体に限らず細い棒状の弾性体の固有振動についても興味を持って考察 しています。

臨界現象の解析

現実には様々な現象が「存在」しますが、現象の数理モデルは現象自体ではないので、数理モデルに現実と対応した現象が「存在」するとは限りません。 例えば微分方程式で与えられる数理モデルであれば、現実の現象を反映した数理的現象の存在、すなわち「方程式の解の存在」は自明ではなく、数学的に保証しなくてはなりません。
現代数学の言葉では「存在すること」は「コンパクト性」として定式化されます。
この「コンパクト性」を巡る数理、特に「コンパクトでないときにどのような現象が生じるか」が基本的な研究テーマです。

 

有限次元空間ではコンパクト性は有界性と同値ですが (Bolzano-Weierstrass の定理)、無限次元空間では非コンパクトな有界集合が多く存在します。 この解析には「プロファイル分解」と呼ばれる一連の理論が有効であることはこれまでに分かっていましたが、これを、具体的な数理モデルの解析に応用することが実際の研究です。
現在までに、臨界型偏微分方程式の解の漸近挙動、臨界型関数不等式に付随する最小化問題の最小化元の存在問題、非コンパクトな変分問題として定式化される楕円型方程式系の解の存在と多重性等を扱っています。

また数理科学的研究としては、癌治療に於ける電気穿孔法の数理や、ニューラルネットの解析学的数理の研究も行っています。

非圧縮流体の時間挙動の制御

水や油に代表される非圧縮粘性流体の運動を記述するナビエ・ストークス方程式の解の時間大域的な漸近挙動に興味があり、運動エネルギー減衰の解析を中心に研究を行なっています。

特にエネルギー減衰などの長時間挙動の研究を通して、流体の非線形現象の解明や、与えられたデータによって流体を制御することを試みています。

 
自然現象の数理モデリング

大気や海洋などの大規模な流体のことを地球流体と呼び、その流れを支配する地球流体方程式に関する研究を行っています。近年、大気を漂うシャボン玉の数理モデリング等を行っています。